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日報

来月のシフトを見ると、社歴10年以上の先輩社員Aさんが有給を取得していた。四連休。ゴールデンウィークには及ばないがそれなりの休暇だ。

 

「どこか行くんですか?」と訊いてみた。

 

「どこか旅行しようかなあと思って。もうずっとどこも行って無かったので…人生あっという間に終わっちゃいますから」

 

Aさんは多分40歳か45歳くらいだと思う。いま25歳のおれですら、時の歩みの容赦なさは少し思い知りつつある。だからAさんからすれば、本当にあっという間に人生は終わる、と感じているかもしれなかった。

 

Aさんは社員としての評判が悪い。所長はAさんより10個くらい年下だけど、いつもAさんを見下しているような雰囲気がある。所長の上司にしてもAさんを馬鹿にしているのだろうな、ということが口ぶりから分かる。所長の上司は快活な方で、Aさん同い年だと思うのだが、その人と比べてしまうと、陰と陽、という感じだ。Aさんは柳のように静かに働いて、仕事を終えると入念に手を洗って帰っていく。覇気はおれから見ても無い。

 

しかしおれはAさんが好きだ。Aさんは進んで自分の話をするタイプでは無いのだが、時折話しかけてみると、意外と色々なことを話してくれる。映画とか本とか野球とか旅行が好きな人で、人の悪口を垂れ流しもしない。話していると、どうしてこの人がこんなに見下されなければならないんだろう、と思う。狭い空間に閉じ込められて働いている人々はいつも見下せる誰かを探していて、Aさんはそういう時に丁度いいおとなしさを備えているのかもしれない。とはいえ、Aさんは誰のことを馬鹿にする訳ではないのだから、他の誰もそうすべきではないはずだ……。

 

オチとかは無い。昨日は昔やってたバンドの曲を今でも聴いてくれていた人に会った。かなり救いになる体験だった。おれが何かを作るとき、どこかにはそれを丁寧に読みといてくれる方がいるのだと思った。ほんとにありがとうございます。音楽家志望者として、おれは府中でラーメンを食って帰る。