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すれ違う人に会釈をすると何が起こるか

禁煙に失敗してから半年くらい経っただろうか。コンビニの店先にある灰皿で一服しているとおれの前をすれ違うお兄さんが居たので、邪魔になったかなと思って軽く会釈をした。

「良いんですよ!頭なんか下げなくってさ」お兄さんが言った。

「あ…はい」と返事を返す。

「そういうのは大事な時にとっとかなくちゃ。やたらめったら頭を下げなくたって良いんだよ」

「お邪魔だったかなと思って」

「良いの良いの!」

「いや〜、クセでして」

「まあ、おれもすいませんが口癖なんだけどね〜」

気さくで明るい人だなと思った。お兄さんはおれの傍らに座って煙草に火を付けた。

見ず知らずの人から不意に言われたことに妙に説得されるときがあるものだな、とおれは思った。

 

それから煙草が灰になるまでの間、お兄さんは通りがかる人々に向かって「なんだよ〜いい大人がジロジロ見てくるんじゃないよ、恥ずかしいと思わないのかなあ、恥じらいがないなら日本人じゃないですよ!」などと悪態を吐いていた。

「ここまで生き延びた自分を褒めてあげたいですよ、一度やってみたらいいよ、何日持つやら」

誰にともなく、お兄さんはデカい声で独り言ちた。

おれもこのお兄さんは誰かに称賛されるべきだと思った。でも関わったら嫌な目にあいそうなので何も言わなかった。