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父について

おととし、妻と籍を入れた。婚姻届を市役所に出し終わったおれは父に電話をした。

「いま籍入れて名字が山﨑に変わったよ」

父の返事は

「おめでとう!」

ではなく、

「ごめん、ちょっと急過ぎて祝う気持ちになれない。名字が変わることに対して何の相談もされなかったし…忙しいし切るね」

だった。

 

は?長男とか名字とかクッソどうでも良いだろ、と思ったので、夜に長文のラインを送った。やり切れず、涙を垂れ流しながら寝た。

 

後日、憎たらしい気持ちの覚めやらぬまま、とりあえず飯を食いに行こうということになった。父方の家の最寄り駅まで出向いて、車で拾って貰う形で対面した。久しぶりの再会だった。父が訊いてくる。

「どこ行きたい?俺はどこでもいいよ。ゆうやの好きなところで。バーミヤン行く?」

中学生だった頃、おれはバーミヤンが好きで、機会がある度に行きたがっていた。父はおれの好物を覚えていた――今のおれではなく、もう少し昔、子供だったおれの好物を。説明が難しいのだけど、おれはそれでなんだか惨めな気持ちになり、腹の底で燻らせていた怒りも、行き場をなくして萎れてしまった。

 

一応、父も多少はおれの結婚を祝福してくれている気がしている。もともとあまり連絡を取り合わない親子ではあるが、元気にしてるかな、とたまに思う。父の方からも連絡は来ない。父の方でも、「元気にやってるかな」等と思ってくれてると良いのだが、自信は余りない。

 

父と母が離婚したのはおれが中学三年生の頃。それからおれが母方の家に引っ越したのは二十歳の頃(妹は現在も父と暮らしている)。父からすると、妻と長男が段階を踏んで視界から消えていった、ということになる。それは寂しいことだろうか?そうでもないのかもしれない、父自身にもよく分からな、という可能性もある。

 

現在も半年に一度会うか会わないかという距離ではあるのだけど、時々、なんとなく父のことを考える。