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無重力

寝不足で出勤し、電車で寝過ごして、目が覚めたら月島に着いていた。

月島というのは月のクレーターの湖に浮かんでいる人工島で、モンジャという名前の指導者が日々軍事演習を敢行しているキナ臭い自治区だ。大江戸線のホームには30分に1本ぐらいの頻度で月島線直通の電車が来る。それに乗ると、ワームホールをくぐり抜けてあっという間に月島に着いてしまう。しかしこのワームホールは一方通行なので、地球に帰るためには宇宙服を着て飛び込み台のような場所からジャンプしなければならない。

月から地球まで落下するというのは中々骨の折れることだ。宇宙服にはジェットパックが装着されていて、自動運転で帰還者を地球へ導くようになっているのだが、時折、帰還に失敗する人が居て、そんな人はスペースデブリ宇宙ゴミ)になってしまう。

拉致なども日常茶飯事であるらしく、地球に帰って来られる人のほうが少ないという話もあるが、おれの経験上、帰れなくなる、ということはそうそう無いように思う。おれは月島を観光したい気持ちを抑えて職場の最寄り駅まで引き返した。

地球まで落下し続けること30分。それで少し遅刻したけど、あとはいつも通りの一日、働いて日が暮れるだけのつまらない一日だった。でも、家に帰ったらさとこがおいしい晩ごはんを作ってくれていたので、幸せな一日だったという気もする。

何もなかった日は嘘をつけばいいんだと思った。