さとこ入院しました
明日の朝、さとこが足の手術をする。医師が推定した病名は動脈瘤、動脈の奇形が痛みを引き起こしているらしい。さとこは中学生の頃からその症状に悩み続けていて、病院に行っても適当な痛み止めを処方されたりするような屈辱の日々を送っていたのだが、今年になって行ってみた病院でいきなり原因が（ほぼ）特定され、あれよあれよという間に追加の検査も済んで、手術の日程が決まったのだった。
昼、有給を取ってくれた母のパートナーの車に乗せてもらって、おれ、母とパートナー、さとこの計四名で病院に行った。今日は手術や入院に関する説明を受けるための一日だった。我々は廊下の両脇に据えられた革張りのベンチで待機した。向かいに座っていた老夫婦が、二人共おなじ動きで足をぱたぱたと動かしているのを見つけてほっこりした。ストレッチか何かだったのかな…。
しばらくして案内された病室は相部屋、各ベッドの周りには患者が自由に開閉できるカーテンがあって、そのカーテンが空間を仕切ることで最低限のプライベートを維持していた。垣間見た感じだと、ギプスをはめた高齢者などが多い印象だった。
さとこはベッドに腰掛け、残りの者はその辺のパイプ椅子に座ったり立ったりして、さらに待った。やがて看護師や形成外科医、執刀医、麻酔医などが順々に訪ねてきて、それぞれの領分に関する説明をした。そういえば、入院は手術の前日から始まるものだというのを今回初めて知った。
母とパートナーは一度帰宅してさとこの枕を取ってきてくれた。さとこは枕を抱き抱えて心細そうにしていた。六時頃、母とパートナーは家に帰っていった。おれはそれからしばらく病室に居て、一緒にだらだらとしていた。
さとこの暇つぶしになればと思って、「MOTHER2」を渡してみた。GBA移植版、元々はスーパーファミコンのRPG。さとこは主人公に「ぽよん」「おすし」「たらこ」「めんたいこ」等の名前を付けた。必殺技の名前は「ひがしやま」（東山魁夷が好きなので）に決定した。さとこが飽きなければ、やがて「ぽよん」が「PKひがしやま」を発射して敵を倒すことになる。
MOTHER2を五分か十分ほどプレイしたところで夕食が運ばれてきた。汁っけの少ないサバの味噌煮、ひじき、サラダ、少し多いご飯。明日はずっと食事が摂れないことになっているので、さとこにとっては最後の晩餐。おれは横でそれを見ていた。
おれも腹が減ったなと思って、ミントクラゲというバンドをやっている高橋さんに連絡してみた。ラーメンを食べるためだけに会いましょう、というような連絡。快諾してもらえたので、病室を後にして新宿に向かうことになった。
ミントクラゲについて
今は新宿からの帰路でミントクラゲのデモを聴いている。ミントクラゲは便宜上J-POP（ジャンクポップ）を標榜し、ハードロックやジャズやファンク等のエッセンスを武器にした楽曲に、呪いのような歌詞がぎっちり詰め込まれた素敵なバンドだ。こんど8/29にライブがあって、もしかしたら新しいデモもそこで入手できるかも知れない。おれは絶対いくので、もし一緒に行く人がいたら連絡ください。
そういえばミントクラゲというのは下落都民的な意味なのかとずっと疑問に思ってたんだけど今ユーチューブみたらチャンネル名に「下落都民ミントクラゲ」って書いてあった。やっぱそうなのか。いや、そうってどうなのかよく分からないけど……
ミントクラゲの高橋さんとは新宿の博多天神に行った。博多天神ってなんか評判悪いっていうか、人と飯行くときに博多天神を提案すると「え〜？」ってなること多くないですか、みたいな話をしながら博多天神に向かい、無事に替え玉一杯無料の恩恵を受けることに成功した後、その辺のカフェに行って、もう少し話した。好きなラーメン屋だから文字を強調してみたんだけど、ウザいからやめときゃよかったなと思っている。
高橋さんとは主に音楽の話をした。ミントクラゲと白いベランダ、それぞれのやり方や考え方を交換するのは面白かった。例えばおれは歌詞を頭から一行ずつ書いて最後にタイトルをつける、高橋さんは先にタイトルを考えてから歌詞を書く、とか。統一感って必要なのかな、とか。作曲にしても作詞にしても、プロセスって人によって全然違う。最終的に出てくるものが提示するのって、背後に隠れて見えないそのプロセスだったりするんだろうなあ。
それからおれも高橋さんもシロップ16グラムが好きだということを発見した。お互いに意外なような、でも腑に落ちるような、なんか微妙な感じになった。
先日高橋さんに勧めたベラ・シエンラについて、高橋さんは「どこか怨嗟を感じる」と言っていた。分からなくもないけど…笑、おれはそれで怨嗟という言葉を覚えた。
高橋さんからはユーライアヒープというバンドとか、ディープパープルの「インロック」と「ライブインジャパン」はかっこいい、とか教えてもらった。ライブインジャパンに関しては、「これがグルーブか…」と唸るようなアルバムであるらしい。あと先日出たブッダブランドのシングルのサンプリングの元ネタも教えてくれた。白いベランダのことも沢山応援して頂いて、がんばろ〜って思った。ありがとうございます。
さとこの手術が無事におわったら白いベランダのアルバムつくる。今年こそ、と五年くらい言ってる。がんばらなきゃなあ。聴いてくれる方がいるなら、なんとかして部屋や電車で聴けるものを用意したい。
さっき、さとこから
「21時消灯って言われてたんだけど本当に電気消えちゃった…」
というラインが来ていた。
がんばれさとこ！！！！
みんなおやすみなさい。
