栃木へ

余命幾許と言われている親戚に会うため、今日栃木に行くことにした。さとことふたりで、宇都宮線直通の湘南新宿ラインの電車に乗っている。さっきまでは豪雨が木立を暗く煙らせていた。車窓は隙間なく濡れ、流れ落ちる雨水が帯のようになって眺望を揺らした。今はもう上がっていて、薄陰る田園風景のパノラマの中で蝉が鳴いている（意外と、電車の中からでも聞こえるものなんだなと思った）。

「あ！にじでてる！」
「し…！（静かにして！）」

という平和な親子の会話が聞こえてくる。その子と妹の会話が電車内のBGMになっている。子供が楽しそうにしていると、透明なようなカラフルなような雰囲気がある。鮮やかだけどまだ淡いもの。それは花開いたり芽を摘まれたりする。運次第だ。次の乗り換えは宇都宮。宇都宮まではあと四十分ほど。意外と乗り換えの待ち時間が短くて、おやつを買う暇がない。

（昼頃書いた）